あるテレビCMに捧げるレクィエム…

白川@団長(第7回演奏会・チラシの裏文)


 さて、10年も前のことですが、某ブランド系アイスクリームのテレビCMで、爽やかなアイスクリームのイメージを根底から打ち壊すような威圧的な行進曲風の音楽が使われていたのを覚えていらっしゃいますか? その曲のレコードはまだ1種類しか出ていなかった当時のこと、私は、このCMを初めて見た時、まず度肝を抜かれ (そもそもCMなんて意識して見るものじゃないので、全く無防備な精神状態に衝撃は倍増) 、わが耳を疑い、やがて感動がこみ上げてきて、「あぁ、ショスタコの4番がCMに使われるなんて、しかも、よりによってアイスクリームだなんて、なんて素晴らしい時代がやって来たんだろう! 」と、ひとりテレビの前で泣きながら手を合わせました。…というのは大げさですが、本当にショッキングなCMでした。


 かように、アイスクリームへの従来のイメージを根底から覆したショスタコーヴィチの第4交響曲は、音楽史上の花道を歩んだ第5番とは逆に、非常に数奇な運命を辿った作品です。この作品の初演を前にして、作曲者が突然これを中止したということがありました。その後この交響曲の総譜はお蔵入り。指揮者コンドラシンによって初演が実現したのは、作曲からなんと25年も後のことです。その理由について、政治上の駆け引きだとか、音楽上の欠陥だとか、いろんな説明がなされますが、寡黙な (寡黙にならざるを得なかった?)ショスタコーヴィチは、やはり必要最小限の情報しか記していない楽譜だけを残して世を去りました。

 さぁ、コンサートですから、音楽を楽しみましょう! …と言いたいところですが、この第4交響曲、お世辞にも楽しい音楽とは言えません。感情の大爆発と瞑想を交互に繰り返すダイナミックな第1楽章、ニヒルでどこか乾いている第2楽章、そして、個性的な音楽の断片が次から次へと現れては消えていく、まるで、誰もいない真夜中の遊園地に迷い込み、突然現れたピエロに連れられていろんな乗り物に乗っていくようなフィナーレに、しきりに何かを言い残すように消えていく不思議なエンディング…。

 えっ?「聴きに行くのやめた」ですって? まぁそうおっしゃらずに、もう一つの演目、オペレッタ「モスクワ・チェリョームシキ」による組曲の話もさせて下さい。原曲は、ショスタコーヴィチの書いたラブ・コメディーのミュージカルです。恋人たちの喜びにあふれた音楽あり、センチな別れの音楽あり、コメディーには付き物のドタバタの乱闘あり、そして、みんなの幸せを予感させるハッピーエンド…。さらに、こんなに楽しい音楽の日本初演(そうなんです! 私たちのこの公演がこの曲の日本初演なんです)ということになれば、もう2月20日の日曜日はダスビのコンサートに決まりでしょう。今回も気合いは十分! ぜひ、錦糸町はトリフォニー・ホールへ!

オーケストラ・ダスビダーニャ団長 白川悟志

PS.かのアイスクリームのCMですが、なぜか(と言うより案の定)、わずか1ヶ月ほどで画面から消え去りました。以来、某社製のアイスクリームは、私の口には少々ほろ苦い…。


もとい